5.リアのデフ補強


(1).スラストベアリングの圧死対策
走行中にボールデフが滑ってしまうと、摩擦熱でデフが溶け壊れます。これはノーマルの540モータでも同様ですが、ボールデフが走行中に滑らない様、モータのパワーに応じて締め付け量を増やす必要があります。
そこで入念に締め込み加減を調整していると、スラストベアリングを圧死させる原因となります(D5ナットホルダーをナメさせてしまったりもします。ナットホルダーの対策は、「4.フロントナックル、リアハブのアルミ化」を参照下さい」
左の図は、スラストベアリングが圧死してしまう原因を示しました。MA7の2×25oのキャップスクリューは頭が小さく、スラストベアリングの中央一点を強く締め付けてしまい、スラストベアリングの外側(図では上側)が歪んで壊れてしまいます。
そこで、SP.587 3mmスプリングワッシャー(15個セット) 価格:105円(税込)を使い、スラストベアリングの圧死を予防します。
具体的には、このスプリングワッシャーを2本のペンチで平らにし、スラストベアリングとMA72×25oキャップスクリューの頭の間に入れます(右側の図)。

スラストベアリングの圧死原因 スラストベアリングの圧死予防



スプリングワッシャーは輪が切れていますから、キャップスクリューピンの頭がスプリングワッシャーの穴を押し広げて中に落ちてしまう上、広がったスプリングワッシャーがデフジョイント内側に接触してしまうので、2o用のワッシャーを間に挟むと確実かと思います(左側の写真)。
使用するワッシャーやスプリングワッシャーは、何を使っても特に問題ないと思いますが(ホームセンターでも売られています)、外径サイズにだけは注意しましょう。スラストベアリングより外径が大きいと、ジョイントカップ内側に接触してしまい、スラストベアリングの機能が損なわれてしまいます(走行中に緩んでしまう)。
ワッシャー&スプリングワッシャー スラストベアリングの外径より小さく



本対策により、スラストベアリングの圧死を予防でき、デフの締め込み具合を楽に調整できます。
また、ボールデフのスプリングが弱ってくると、完全に閉め込んだ状態から滑り出す迄の調整幅が少なくなってきますが、スプリングワッシャーに適度な弾力性を残すと、この調整幅が増えて調整が楽になります。
但し、いくら圧死予防策をしたからと言って、締め付けには限度がありますから注意して下さい。
ネジの締め付ける圧力は、万力に相当します。小さなスラストベアリングに過大な力を加えると壊れてしまうことには変わりありません。上記の対策は、今まで「恐る恐る締め込む」恐怖から解放される程度に考えて下さい(力一杯締め込んだら壊れて当然です)。
また、ハイパワー化の有無に関わらず、スラストベアリングの定期的なメンテは必須だと思います。デフをメンテするタイミングで、スラストベアリングをパーツクリーナーで良く洗浄し「これでもか!」と言う位、念入りにアンチウェアグリスを塗り込んで下さい(爪楊枝でボールの間にグリスを詰め込むと、やり易いと思います)。
スラストベアリングはデリケートな部品ですが、上手に使うとハイパワーでも末永く使用できますよ。



(2).フロントのデフジョイントをリヤに転用
フロントデフのジョイントカップ(MJ1とMJ2)は、一体型のスチール削りだしパーツとなっており、十分な精度と強度を持っています(左側の画像)。
しかしリアのジョイントカップ(MJ3とMJ4)は、右側の画像に示す通り、デフハウジングプレートがプラスチック製の別パーツとなっており(MK3)、プラスチック故に精度や強度が低く、取説に記載されている通りにデフプレートを接着する必要があります(フロントは取説でも接着不要です。リアは、プラスチックで強度が低い為、ハイパワー時には取説通りにデフプレートを接着しないと、保持できず破損します)。
フロントのデフジョイント リアのデフジョイント



そこで、フロントのジョイントカップをリヤに転用する方法が、昔から広く知られていますので紹介します。
具体的な方法は、フロントのデフジョイントカップ(MJ1とMJ2)を2o程削って短くするだけの簡単な加工で、後はリアにポン付け可能です。
ちなみにDF-03は、フロントのデフジョイントカップ角が欠ける持病があり(*1)、不幸にして欠けてしまったフロントのカップを削ってリヤに転用すると大変経済的です。
写真左は、欠けてしまったフロントのデフジョイントカップに、削る位置をマスキングでマイクした状態です。このマスキング位置まで削ります。
写真右側は、削って短くした後、元の通りテーパー形状に入り口を広げるように削った状態です(これをやらないと、フルボトム事にカップの縁がドライブシャフトに干渉します)。たったこれだけの加工で終わりです。
この様に、リュータさえ持ってれば、フロントのジョイントカップをリアに簡単に転用できます。
フロント用は全て金属製ですから、精度も高く剛性もあり、そして何よりデフプレートの接着が不要ですから、デフプレートを裏返して両面を使用したり、デフプレートだけを交換するのが容易になります。
マスキングテープで、削る位置を決める テーパー形状に加工



本ページに記した対策は必須ではありません。標準の状態でも正しくプレートを接着し、適度なデフ締め込みを行えば問題はありません。
上記の対策は、ハイパワーでも安心して締め込み調整ができたり、メンテナンスが楽になったり、経済的になる為の工夫です。
尚、ハイパワーだからと言って、無理にデフを強く締め込む必要はありません。どんなにハイパワーでも、タイヤと地面間のミューを超えたトルクは発生しませんから、過大な締め付けをしても無意味にデフプレートやデフボールを傷めるだけです。
デフはタイヤと直結していますから、デフ調整時「この程度の力で滑らなければ、後はタイヤの方が先に滑る」ポイントをイメージしながら、少し余裕ある締め付け加減にすれば良いかと思います。そして新品のデフプレート使用時には、1パック走行後に再調整すると良いと思います(プレートに溝が付くので)。
デフプレートやボールをシッカリ脱脂して、適切なグリスを使用すれば、少し強めに締め込むだけで十分な筈です。

使用するデフのグリスですが、正直言ってタミヤ純正のボールデフグリスは、あまり良く無いと思います。定番はアソシのステルスデフルーブですが、私は「ヨコモ CS-HDL ハイグレード ボールデフグリス 」がお気に入りです。かなり高粘度なので、ハイパワーでのオフロード走行でもトラクションが得られやすいと思います。


<2012/8/11追記>
(*1)フロントデフジョイントのカップの欠け対策
標準のプラスチック製CVAダンパーを使用している場合、フロントのダンパーが若干短い為、サーキット等でのジャンプ着地時、強い力でフルボトムすると、カップの縁がにシャフトに干渉しカップが欠けてしまいます。机上チェックでは干渉していない様でも、実際の走行では強い衝撃(着地の圧力)が加わり、プラスチックのダンパーが歪んで(潰れて)沈む為です。
一番良い対策は、OP.1028「バギー用エアレーションダンパーセット」を組み込むことです。フロントは、エアレーションダンパーの方が長いですし、アルミ製なので強い力が加わっても変形せず、カップが欠けなくなります。なにより走行性能がワンランク上がりますから、サーキットを走行させる場合、付けて損は無いオプションだと思います。
CVAダンパーのままサーキット等を走行する場合、フロントのデフジョイントを1mm程、短く切りつめると欠けなくなりますよ。


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